T.K.
技術統轄部 先行開発グループ / 入社12年目
2014年入社。大学院で高分子材料を専攻。入社後は電線材料の開発を経て、2020年からEV向け高電圧ハーネスの先行開発を担当。800V対応システムの開発プロジェクトをリードする。
きっかけは、OEMパートナーの一言だった
800V対応ハーネスの開発が始まったのは、2020年の秋でした。ある欧州OEMの技術者から「400Vの延長では、次のEVプラットフォームは成立しない」と言われたのがきっかけです。
それまで私たちは、既存の400Vハーネスの改良——絶縁強化、コネクタの大型化——でEVに対応できると考えていました。しかしパートナーが求めていたのは、まったく別のアプローチでした。充電時間を10分に短縮し、駆動効率を根本から変える。そのためには、ハーネスを「あたりまえ」から設計し直す必要があったのです。
材料から見直す——銅からアルミへ
最初に着手したのは、導体の素材変更でした。800Vシステムは電流が小さくなる反面、ハーネス全体の絶縁と遮蔽が飛躍的に重要になります。そこで、重量を削りつつ遮蔽性能を確保するために、導体をアルミ合金に切り替えることを決断しました。
正直、社内でも「アルミでは接合信頼性が足りない」という声がありました。しかし、住友電工グループの材料技術——端子の特殊メッキ処理や超音波接合——を組み合わせることで、銅と同等の接合信頼性を実現できた。親会社SEIとの「三位一体」の強みを実感した瞬間でした。
パートナーと共に考え、共に悩んだ時間
開発期間中、毎週のようにOEMパートナーとオンラインで技術協議を行いました。車両アーキテクチャ全体を見ながら、ハーネスの配策ルートを1本ずつ検討する。彼らが抱える熱マネジメントの課題を聞き、私たちの遮蔽技術で解決策を提案する。
「仕様を決めてもらって、そのとおりに作る」という従来のサプライヤーの関係ではありませんでした。互いの技術を持ち寄って、一緒に最適解を探す。30Vビジョンが掲げる「サプライヤーからパートナーへ」の転換を、開発の現場で体感しました。
従来比30%の軽量化——数字の向こうにある意味
結果として、800V対応高電圧ハーネスシステムは従来比30%の軽量化を達成しました。この数字は、EV1台あたりの航続距離の延長と、CO2削減に直結します。
しかし私にとって、この数字以上に誇らしいのは、「パートナーが求めていた以上のもの」を届けられたことです。当初の要求仕様は25%軽量化でした。それを30%まで引き上げられたのは、材料技術、接合技術、モジュール設計を横断的に最適化したから。一つの部署だけでは到達できなかった成果です。
これからの挑戦
800Vシステムは2027年の量産に向けて、いまは量産技術の確立フェーズに入っています。先行開発とは違い、33ヵ国の生産拠点で同じ品質を再現する。これがまた、大きな挑戦です。
次に見据えているのは、光ハーネスとの統合です。電力と情報を1本のハーネスに束ねる——それが実現すれば、クルマのアーキテクチャはもう一段変わる。パートナーの皆さまと「次の次」を一緒に描いていきたい。そう思っています。
「パートナーであるOEMの技術者と一緒に考え、一緒に悩んだ時間が、最大の財産です」
T.K. / 技術統轄部 先行開発グループ
ある1日のスケジュール
| 8:30 | 出社、メール・チャット確認 |
|---|---|
| 9:00 | チームミーティング(開発進捗共有) |
| 10:00 | 試験データの解析・レポート作成 |
| 12:00 | 昼食(社内食堂) |
| 13:00 | OEMパートナーとのオンライン技術協議 |
| 15:00 | 試作品の評価試験立会い |
| 17:00 | 翌日の準備、資料整理 |
| 17:30 | 退社 |