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ワイヤーハーネス製造が直面する課題

ワイヤーハーネスは、自動車に搭載される部品のなかでも最も労働集約的な製品の一つです。1台あたり1,000本以上の電線を正確に束ね、数百のコネクタに接続する工程は、長年にわたり人の手に依存してきました。

しかし、グローバルな製造拠点では深刻な労働力不足が進行しています。加えて、CASE時代の到来により車両1台あたりの回路数は増加の一途をたどり、ハーネスの複雑化が加速しています。人手に頼る生産体制では、品質の均一性維持とコスト管理の両立が年々難しくなっているのが現状です。

この構造的課題に対する住友電装の答えが、スマートファクトリー構想「e-STEALTH W/H」です。

e-STEALTHとは何か

e-STEALTHは「Electronic Sumitomo Electric Automated Line for Total Harness」の頭文字をとった名称です。ワイヤーハーネス製造の全工程をデジタル化・自動化し、2030年までに自動化率50%の達成を目指す全社的な取り組みです。

従来、ワイヤーハーネス製造の自動化率は業界全体で約20%にとどまっていました。フレキシブルな電線を扱う工程は、産業用ロボットにとって最も難易度の高い作業の一つとされてきたためです。e-STEALTHは、この「自動化の壁」を3つのコア技術で突破します。

図解: e-STEALTH構想の全体像 — 3つのコア技術の関係図

3つのコア技術

1. AI外観検査システム

ディープラーニングを活用した画像認識技術により、端子の圧着状態、電線の配索位置、コネクタの嵌合状態を自動で検査します。従来の目視検査と比較して、検出精度は99.7%以上を達成。見逃し率を従来比で約85%削減しました。さらに、検査データを蓄積・分析することで、不良の傾向を予測し、工程上流での未然防止につなげています。

2. 協働ロボットによる組立自動化

柔軟な電線を扱うため、力覚センサーとビジョンシステムを搭載した協働ロボットを独自開発しました。人と同じ作業スペースで安全に稼働し、電線の挿入・テーピング・結束といった繰り返し作業を担います。2025年度には、サブハーネス組立工程の自動化率を35%まで引き上げることに成功しています。

3. デジタルツインによる生産最適化

工場全体をデジタル空間上に再現し、生産ラインのシミュレーションをリアルタイムで実行します。新車種の立ち上げ前に仮想空間で工程設計を検証することで、ライン構築のリードタイムを従来比40%短縮。設備投資の最適化にも貢献しています。IoTセンサーから取得した稼働データは、予知保全にも活用され、計画外停止の発生率を年間60%削減しました。

成果データ

指標2023年度2025年度2030年度目標
自動化率20%35%50%
工程内不良率基準42%削減70%削減
ライン構築リードタイム基準40%短縮60%短縮
計画外設備停止基準60%削減80%削減

パートナーへの提供価値

e-STEALTHの進化は、OEMパートナーのサプライチェーンに直接的な価値をもたらします。自動化率の向上は、地政学リスクや労働市場の変動に左右されにくい安定供給体制の構築を意味します。品質データのデジタル化により、トレーサビリティの精度は飛躍的に向上し、リコール発生時の原因特定と影響範囲の絞り込みを迅速化します。

また、デジタルツインを活用した工程設計により、新車種向けハーネスの試作から量産移行までの期間を大幅に短縮。パートナーの開発スケジュールに柔軟に対応できる体制を整えています。

2030年に向けて

住友電装は、e-STEALTHを単なる自動化プロジェクトではなく、ものづくりの本質的な変革と位置づけています。2030年の自動化率50%達成に向けて、AI技術の高度化、ロボットの適用範囲拡大、そしてグローバル全拠点への展開を加速していきます。労働力に依存しない、持続可能で高品質な生産体制を確立し、パートナーの競争力強化に貢献し続けます。

執筆者: 生産技術本部 スマートファクトリー推進部
監修: e-STEALTHプロジェクト統括グループ

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